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研究

東京医科歯科大学歯学部では、口腔科学に関する基礎的・臨床的研究を幅広く進め、
医学・歯学の進歩と発展に貢献するとともに、国民の健康増進を図ることを目指しています。

研究レポート

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口は私たちが生命を維持するための外界との接点であり、食物を咀嚼(かむ)、嚥下(飲み込む)することはもとより,体外の様々な害的物質から生体を防御する役割も担っています。さらに、味を楽しむ(味覚)、話す(言語)など、生活の質(QOL)を維持するために高度な機能を担う器官でもあります。そのような口腔環境と全身の健康が密接な関係を持つことがわかりつつあります。例えば歯周病やむし歯などの口腔疾患は糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病を悪化させることが知られています。また、高齢化社会の到来とともに、口腔機能が低下することにより、心身機能の低下に拍車がかかることが問題となりつつあります。さらに、口腔がんなどの難病により奪われる尊い命の数は年々増えつつあり、生まれながらの頭蓋、顔、あごの形成異常とともに口腔関連の難病の解明は急務です。つまり、より健康に長生きするためには口腔環境を健康に保ち、口腔関連疾患の治療法を開発することが重要になります。

私たちの研究

東京医科歯科大学

東京医科歯科大学は、文部科学省の公募型大型プロジェクトである平成25年度「研究大学強化促進事業」の支援対象機関linkに選定され、リサーチユニバーシティ(RU)として研究戦略や知的財産を担う研究マネジメント人材群の確保・活用や、集中的な研究力強化に取り組んでいます。


具体的には、東京医科歯科大学RU推進機構 linkを設置し、学長のリーダーシップの下でガバナンス強化を進めるとともに、人材確保、研究環境の整備、産学連携推進を図ることで、世界大学ランキングトップ100入りを果たすことを目指しています。

さらに本学では、研究活動を支える学内共同研究施設として、産学連携研究センター、疾患バイオリソースセンター、医歯学研究支援センター、再生医療研究センター、実験動物センター、臨床試験管理センター、生命倫理研究センター、医療イノベーション推進センター、脳統合機能研究センターを整備し、大学全体として研究力を強化するシステムの構築に努めています。


このように研究を志す者にとっては恵まれた環境において、歯学部は、口腔科学に関する基礎的・臨床的研究を医学部や生体材料工学研究所ならびに難治疾患研究所などと連携しながら推進しています。詳しい研究の内容については、「最先端口腔科学研究推進プロジェクト」のページをご参照下さい。

顕微鏡

研究最前線

歯並び、かみ合わせの治療から呼吸機能も含めた新しい矯正歯科治療へ

小野 卓史

東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 教授

 歯並びやかみ合わせを治療する「歯の矯正」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?歯に付ける金属やプラスチック製の小さな器具(ブラケット、といいます)やワイヤー、あるいは、取り外しができる透明なマウスピースのような装置でしょうか?それとも矯正治療を経験したひとであれば、歯の痛みでしょうか?これらはいずれも矯正歯科治療で行う、あごの骨の中での「歯の移動」に関連するものです。一方、私が、歯学部を卒業し歯科矯正学の大学院に進学して以来、現在に至るまで、専ら研究対象にしているのは、「歯の移動」ではなく「呼吸」です。「呼吸」がなぜ、歯の矯正に関係するのか、皆さんは疑問に思うでしょう。
 舌は、そのほとんどが筋肉でできていて最大の筋はオトガイ舌筋といいます。このオトガイ舌筋は、前方では舌を突き出すとともに、後方では気道を広げる機能を持っています。これまでの研究で、オトガイ舌筋は呼吸と同期したリズムを持って活動していることが分かっています。ところで、鼻がつまっていたり扁桃が腫れていたりすると、ヒトは口で呼吸するようになります。これは生命維持のために不可避な現象であり、皆さんも思い当たることがあると思います。口呼吸時には、オトガイ舌筋の活動は強くなり、逆に口を開けるために、口の周りの筋肉(口輪筋)や顎を閉じる筋肉(閉口筋)の活動が弱くなります。このような歯や顎の位置に関係する一連の筋肉の活動が慢性的に変化するので、歯並びやかみ合わせも変化するわけです。柔よく剛を制す、といった譬えが合っているかもしれません。
 私はこれまで、動物モデル研究とヒト臨床研究を組み合わせて行い、舌については、呼吸性リズム活動に関与する舌運動の中枢制御系、呼吸様式ならびに姿勢変化に伴う舌圧の変化、呼吸については、鼻閉塞および閉塞性睡眠時無呼吸が顎顔面領域ならびに全身に与える影響などを解析してきました。最近では、特に、閉塞性睡眠時無呼吸の一つの病態である間欠的な低酸素状態が、成長期あるいは乳幼児期、さらには妊娠期に与えるさまざまな問題点を、専門家のチームを構成してマクロ・ミクロの両面から解明するプロジェクトを実施しています。矯正歯科治療からは遠ざかっていくようでもありますが、顎顔面口腔領域を対象とする生物学という大きな捉え方をすれば、違和感はありません。
 思えば大学院生時代の研究テーマが形を変え膨らんだ状態で現在に至っているわけです。皆さんも、テーマを設定したら、少し離れたところから取り組んでみると、ものごとの違った側面を見ることができ、さらにもう一歩チャレンジする意欲が湧いてくるのではないでしょうか。

研究報告の様子

国際学会にて研究発表