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全分野紹介

歯周病学分野

主任教授
岩田 隆紀
歯周光線治療学
担当教授
青木 章
准教授
片桐 さやか
講師
水谷 幸嗣
助教
芝 多佳彦, 大杉 勇人, 前川 祥吾, 
岩田 隆紀

所在地 10号館7F
TEL 03-5803-5488 FAX 03-5803-0196
分野HP http://www.tmd.ac.jp/dent/peri/peri-J.htm

分野概要

歯周病学とは歯周病の研究、予防及び治療を取り扱う歯科学の一部門である。歯周疾患または歯周病とは、歯の支持組織である歯肉、歯根膜、セメント質及び歯槽骨よりなる歯周組織に発症する全ての病気の総括的疾患名であるが、現在では主として慢性及び急性の炎症性疾患を指している。歯周病に関する原因論、生体応答、口腔細菌、全身との関係および組織再生等についてより深く教育する。また、歯周組織の破壊過程に関する研究成果を通じて、新しい治療法の開発を行う。

研究活動

本講座は、歯周病の病因、診断および治療に関して以下の項目に従って研究を行っている。

  • 歯周病原細菌に関する研究
    P. gingivalis やA. actinomycetemcomitans といった歯周病原細菌は高い病原性を持ち、時には歯肉組織内へ侵入して歯周組織に高度な破壊を起こすと考えられている。 しかし、歯周炎患者から歯周病原菌が検出されない、または健常者や健常部位から検出される場合も認められる。 そこで既知の細菌だけでなく、細菌の集合体(バイオフィルム)としての病原性の評価、新たな病原因子としてウイルスや未知の細菌が関与する可能性を検討している。 最近では、インプラント周囲炎に関与する細菌叢についても検索を行っている。
  • 歯周炎における遺伝的要因の解明
    歯周病に対する感受性は個体によって異なるため、遺伝的な要因が関与していると考えられている。 我々はダウン症候群やパピヨン·ルフェーブル症候群では遺伝疾患の口腔内症状として重度な歯周炎が見られることを報告してきた。 また、fMLP レセプターの遺伝子型が侵襲性歯周炎の発症に関与していることを報告した。 現在これらの遺伝子型に基づく診断· 治療の可能性、ならびに新規の候補遺伝子の検索を同時に行っている。
  • 歯周炎における生体応答調節因子の作用機序に関する研究
    歯周炎局所ではサイトカイン(IL-1, IL-6, IL-17 など)、プロスタグランジン(PGE2) などの生体応答調節因子の産生が認められ、 また、近年HMGB1 などの核蛋白や内因性マリファナであるアナンダマイドなどの新しい生体調節因子が注目されているが、歯周炎におけるこれらの分子の役割には不明な点が多い。 これらの生体応答調節因子の解明により,新しい診断法· 治療法の開発につながるよう、研究を進めている。
  • 歯周組織再生に関する研究
    従来の歯周組織再生治療は、自家骨移植などのScaffold を利用するものが主流であり、分化成長因子との組み合わせ、足場の保持等に難があった。 その欠点を補えるバイオマテリアルとして我々は、操作性および足場の保持が優れているトンネル型β-リン酸三カルシウム(β-TCP)の開発と応用に取り組んでいる。 一方、組織工学的手法を用いて歯根膜細胞をシート状に加工する技術を開発し、大型動物への移植で良好な結果を得ている。 この方法はScaffold なしで細胞外基質を温存したまま移植可能で、臨床応用には有利であると考えている。 さらに、歯周組織再生の鍵となる歯根膜細胞に注目し、その生物学的特徴を検討し、 これまでS100A4、FDC-SP や新規遺伝子アメロティンをクローニングし現在機能解析中である。 これらの遺伝子/タンパクの再生治療への関与について検討を進めながら、新たな再生治療ターゲット遺伝子の探索も続行中である。
  • Er:YAG レーザーによる新しい歯周治療の開発
    殺菌効果や無毒化を伴い、組織侵襲が少なく徹底的な病的組織の除去が可能な本レーザーを応用し、 従来の歯周ポケット治療の概念を変革する新規の歯周治療法を確立し、厳密な臨床比較研究によりその有効性を多角的に評価する。 さらに、網羅的プロテオーム解析を用いてレーザー照射後の細胞の変化をタンパク質レベルで検索し、 炎症の軽減や組織再生の促進などの各種の生物学的効果の可能性とそのメカニズムを明らかにすることを目標に研究を進めている。 新しい歯周病検査にOCT (Optical Coherence Tomography)による歯周組織断層診断の有用性を検討している。
  • 全身疾患と歯周病との関連性に関する研究
    歯周病が糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病のリスク因子であることが注目されている。 我々はバージャー病や動脈硬化、糖尿病などの疾患と歯周炎との関連を報告してきた。 現在はその関わりについての分子機構を明らかにする目的で血管病変部における歯周病原細菌の検出やサイトカイン遺伝子の発現などについて詳細に検討を加えている。 さらに介入研究によって歯周治療によるこれらの疾患の改善についても検討している。 また、生活習慣病以外の全身疾患においても、炎症反応の増悪に歯周炎が関与することが報告されている。 特に誤嚥性肺炎や関節リウマチと歯周病の関連が注目されており、これらの疾患と歯周病の関わりについての分子機構を検討している。 さらに誤嚥性肺炎への予防の一環として、多剤耐性菌に対しても殺菌能を持つオゾンナノバブル水(特許申請中)の歯周治療への応用に着手している。 加えて、歯周病と早産· 低体重児出産との関連性について検討している。

教育活動

1.教育

歯周病の代表的なものは歯周炎で、口腔内の不潔によるプラーク中の細菌の蓄積、歯石の沈着、その他の多くの原因により歯肉炎として発病し、歯周病原細菌と呼ばれるポケット内のグラム陰性嫌気性細菌の増殖により歯周組織の炎症性病変が起こる。この際、歯を支える歯根膜や歯槽骨の喪失が起こり、歯の支持組織を破壊しながら進行し、最終的には歯は支えを失い脱落する。歯周炎は現在、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎と全身疾患に伴う歯周炎に分類され、その中で侵襲性歯周炎の原因としての生体因子についての研究も進んできている。 歯周病はいくつかの全身疾患(心臓血管系疾患、糖尿病、呼吸器系疾患、早産・低体重出産、骨粗鬆症など)との関連性が示唆されており、歯周治療を行うことは全身の健康に寄与し得ることについても学習する。

教育方針

教育の基本方針として、『歯周組織の構造、機能、病理さらに正常な口腔状態を維持するための生理的な因子をまず理解させて、歯周組織に起こる病変の検査、診断力を養う。次に歯周病の病因について理解させ、歯周病の原因がプラーク中の細菌によるものであるとの認識を深めさせ、歯周治療の基本がプラークコントロールであることを徹底させる。また、単に知識や技術の修得だけでなく、患者自身にその大切さを認識させる動機付けや信頼関係の確立という心理的および倫理的な点も学ばせる。』ということを掲げている。 歯学部学生に対する講義と実習は、第4学年後期に行われ、講義時間は37時間、チュートリアル15時間、実習は38時間が割り当てられている。基礎実習としては、相互実習による口腔内の観察と検査法および口腔清掃法の実習、人工歯模型とマネキンを用いたスケーリング・ルートプレーニングの方法と暫間固定法の実習、豚の下顎を用いた歯周外科手術の実習、咬合器と石膏模型を用いた咬合調整法とナイトガード作製の実習を行っている。第5学年前期終了時、コアーカリキュラムに基づき共用試験のOSCEとCBTを受験させ、合格者のみ第5学年後期〜第6学年の包括臨床実習に進む。およそ1年間で、実際の歯周病患者の治療法を修得できるように指導している。

歯周治療は、患者の口腔内での歯周病の進行状態を十分に把握した上で診断し、治療方針をたてて予後を予測しながら治療を進めていかなければならない。1年間で治療を終了させメインテナンスまで到達させることは難しい症例もあるが、その場合は次年度の学生に治療を引継ぎ、終了させるように指導を行っている。歯周治療を行う場合には、初診時の検査、診断終了後、再評価後、治療終了時に教員が指導し、また、歯周外科処置は教員の指導の下で行っている。 以上、学部学生に対する卒前教育の他に、主に専攻生、歯科研修医を対象にして卒後教育を行っている。卒直後の研修は極めて大切であり、歯周治療の基本を身につける好機でもあるので、臨床経験を深められるように配慮している。

臨床上の特色

歯周病により失われた歯周組織を再生することは歯周治療の最終目標である。自己歯根膜細胞シートを応用した歯周組織再生療法等を中心に臨床に直結した基礎研究を展開中である。また、レーザーを歯周治療に応用するためのプロジェクトも推進中で、フラップ手術のデブライドメントにレーザーを応用することが保険に認められた。また、歯周再生療法の一つであるエムドゲインⓇ応用によるバイオ・リジェネレーション法や、日本発の再生材料であるリグロスを用いた再生療法を行っている。PCR法を利用した細菌検索、血清抗体価やフローサイトメーターを利用した免疫学的診断、歯周病感受性検査のための遺伝子診断等なども行っている。