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全分野紹介

歯髄生物学分野

教授
興地 隆史
准教授
川島 伸之
講師
渡辺 聡, 海老原 新
助教
田澤 健人, 牧 圭一郎, 木村 俊介
興地 隆史

所在地 歯科棟北10F
TEL 03-5803-5494FAX 03-5803-5494
MAIL t.okiji.endo(ここに@を入れてください)tmd.ac.jp
分野HP http://www.tmd.ac.jp/endo/index.html

分野概要

歯髄生物学分野は、歯髄および根尖歯周組織の疾患の予防、診断ならびに治療を考究する歯内療法学を専攻する分野である。歯髄は周囲を硬組織に囲まれた特殊な環境下に置かれている。歯を保存し、口腔内で十分に機能させるためには、歯髄の構造的・機能的特徴をよく理解し、歯髄の保護に努める必要がある。他方、歯髄疾患を放置すれば、やがて歯髄死を招き根尖歯周組織疾患を生ずるに至るが、その治療に際しては、複雑な根管系における細菌感染の入念な排除が必要となる。歯内療法学は、歯髄疾患や根尖性歯周疾患の予防や治療により、歯を保存し永くその機能を営ませることを目的としている。

研究活動

本分野では以下のようなテーマを対象として研究している。

  • 象牙芽細胞・歯髄細胞・歯髄幹細胞のバイオロジー
    1-1. 間葉系幹細胞を用いたラット歯髄組織の再生
    間葉系幹細胞とスキャホールドを、冠部歯髄を除去したラット上顎臼歯に移植すると、歯髄様組織の再生が生じることがわかった。冠部歯髄を除去したラット臼歯に間葉系幹細胞および血管内皮細胞を混合移植すると、血管新生能が亢進し組織の再生が促進され、デンティンブリッジ様硬組織形成を伴う歯髄組織の再生が起こることがわかった。上記の実験系において、さらにmineral trioxide aggregate (MTA)を封鎖材として用いると、さらに組織の再生が促進されることがわかった。

    1-2. ラット歯髄組織における幹細胞様細胞の分布
    ラット冠部歯髄においてMAP1BおよびCD146を発現する幹細胞様細胞が多数分布することを同定した。Lipopolysaccharide(LPS)により歯髄炎を誘発したラット切歯歯髄組織を検索対象として、MAP1B(あるいはSTRO-1)およびCD146を発現する幹細胞様細胞の変化を経時的に解析したところ、幹細胞遊走・増殖関連因子の発現上昇とともにMAP1B/CD146およびSTRO-1/CD146二重陽性幹細胞様細胞の増加が生じることがわかった。

    1-3. 歯髄未分化間葉細胞の特性に対する培養条件の影響
    未分化間葉系幹細胞である歯髄幹細胞を再生医療に使用する場合、歯髄組織より採取できる歯髄幹細胞数には限界があり、in vitroで培養し細胞数を必要量まで増やす必要があるが、培養の過程で幹細胞特性が失われてしまう可能性が危惧される。実際、ヒト歯髄幹細胞を密な状況で培養すると、CD73陽性細胞とCD105陽性細胞の比率が低下し、細胞増殖活性が低下することが明らかになった。さらに、神経、脂肪への分化誘導には影響を認めなかったが、骨への分化傾向は亢進した。骨への分化傾向の亢進は、インテグリンシグナルすなわちFAKおよびPI3K/AKTカスケードが活性化された結果と推察された。以上の結果より、幹細胞特性を維持するためには、細胞接触が起きないよう、疎な状況で培養することが重要であることが明らかになった。

    1-4. Osr2 (odd-skipped related 2)の歯髄細胞における機能
    Osr遺伝子はジンクフィンガー型転写調節因子であり、胎児発生および骨形成に関わっている。C57BL/6マウスより、切歯歯髄および歯肉組織を摘出し、Osr2発現を検討したところ、歯髄組織においては比較的高いOsr2発現を認めた。歯髄細胞としての特性を示すMDPs細胞にOsr2発現ベクターをトランスフェクションし安定発現株を作製したところ、Osr2発現の増加に伴い骨・象牙芽細胞関連遺伝子の発現および石灰化結節形成が亢進した。以上の結果より、Osr2は歯髄細胞の骨・象牙芽細胞分化を正の方向に制御している可能性が示唆された。

    1-5. 象牙芽細胞の感覚受容に関する電気生理学的研究

    1-5-1. 象牙芽細胞冷刺激検知イオンチャンネルの発見
    ヒト新鮮単離象牙芽細胞膜に、非侵害性冷刺激で作動するイオンチャンネルが存在することをホールセルパッチクランプ法で証明、解析した。併せて、非侵害性冷刺激感受性イオンチャンネルタンパク質であるTRPM8の存在を、分子生物学的、免疫組織学的に証明した。以上より、ヒト新鮮単離象牙芽細胞が歯髄の非侵害性冷刺激に対するエネルギー変換に寄与する可能性を示唆された。

    1-5-2. 象牙芽細胞間の電気カップリング
    象牙芽細胞間のイオンおよび低分子の移動にはgap-junctionを介した情報伝達系が関与しており、その電気conductanceをdual patch clamp法を用いて明らかにし、その加齢、細胞外温度、細胞外pHの影響を観察した。細胞間ネットワークは象牙芽細胞およびその下層の細胞を含めて、大きなネットワークを形成しており、細胞間レジスタンスはあるものの、横断面で考えるとほぼ歯髄の反対側まで繋がっていることが明らかになった。

    1-5-3. 象牙芽細胞膜のカルシウム伝播系
    象牙芽細胞膜対する機械的歪み刺激が細胞膜カルシウムチャネルを介したカルシウムイオンの流入とそのギャップジャンクションを介した伝播を引き起こすことがわかった。この流入・伝播にはIP3(イノシトール3リン酸)を引き金としたカルシウムストアからイオン流出が関与することが確認された。

  • 歯髄炎の発症および進展に関与する因子とその制御
    2-1. 歯髄炎におけるmicroRNAの役割と炎症制御
    歯髄炎の進行は抜髄処置を必要とし、歯髄の喪失はさらには歯の喪失につながりうる。近年、様々な生体反応において重要な役割を担っていると報告されているmicroRNAも、歯髄炎の発症過程に関与している可能性が高い。microRNAの一つであるmiR-21は、歯髄炎進行過程において発現が誘導されるが、miR-21の過剰発現によりNFkBシグナルが抑制され、その結果炎症性メディエーター発現が低下することを明らかにした。さらに、NFkBシグナルの抑制は、その上流のTRAF6、PDCD4発現をmiR-21がサイレンシングしていることが明らかになった。

    2-2. 歯髄細胞におけるHIF1αによる炎症性サイトカイン発現制御
    周囲を硬組織で囲まれている歯髄は、炎症の進展により内圧が亢進し、容易に低酸素状態に陥る。低酸素状態の細胞において発現が誘導されるHIF1αは、歯髄炎の病態を深く修飾している可能性が推察されるが、その詳細は明らかではない。ヒト歯髄細胞を低酸素状態で培養し、LPSで刺激するとHIF1α発現が亢進した。また、HIF1αの強制発現はLPS/TLR4シグナル下流の転写調節因子NFκBのリン酸化を亢進し、炎症性サイトカインであるIL1β、TNFα発現を促進したが、IL6発現は抑制された。歯髄炎の進行により低酸素状態に陥った歯髄組織において、HIF1αは病態を複雑に制御している可能性が推察された。

  • 感染排除と歯髄再生を見据えた根管洗浄法
    3-1. 次亜塩素酸ナトリウム溶液により変性した象牙質表面のEDTA処理による賦活化
    Revascularizationを含む歯髄組織再生を行う上で、根管象牙質の表面性状は大変重要である。根管洗浄剤として広く使用されている次亜塩素酸ナトリウム溶液は強力かつ非特異的な殺菌作用を有するが、象牙質表面の変性を引き起こす。1.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液でウシ象牙質ディスクを処理した場合、歯髄細胞としての特性を有するMDP細胞の象牙質ディスクへの接着は阻害されるが、次亜塩素酸ナトリウム溶液処理後にEDTAにて処理することにより象牙質ディスクへの細胞接着は回復し、象牙質ディスクに接着したMDP細胞における骨芽・象牙芽細胞マーカー発現の亢進が認められた。走査および透過型電子顕微鏡を用いての観察により、MDP細胞は象牙質のコラーゲン様構造物に接着している可能性が高いことが明らかになった。なお、6%次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理した場合には、EDTA処理による賦活化は観察されなかった。歯髄再生を行う上で、根管洗浄液としての次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は1.5%に抑える必要があるとともに、EDTA処理が必須であることが明らかになった。

    3-2. 歯科用レーザーを用いたLAIの安全性および清掃性に関する検討
    歯内療法における新たな根管洗浄法として、歯科用レーザー照射装置を用いたLAI (Laser-Activated Irrigation) が考案され、高い洗浄能力を示しており、その臨床応用が期待されている。しかしながら、LAIでのキャビテーション効果の発生分布や、生じる高速水流の流量分布、根尖孔外への溢出リスクや、側枝などの複雑な根管形態への洗浄効果を測定した報告、各種レーザー装置間での洗浄効果の差に関する報告はほとんどみられない。現在のところ、Er:YAGレーザー、半導体レーザーを用いたLAIにおいて、レーザーチップ先端に加工を施すことで、通法の洗浄よりもキャビテーションバブルが有意に多く生じることが示唆された。 コンピューター制御でチップ先端処理を行い同部への熱エネルギー集中を可能とした半導体レーザーが開発された。熱エネルギーが集中することでキャビテーションの発生とともに洗浄液の温度の上昇を認めた。LAIにおいて高い軟組織除去率を示したがこれはNaClO溶液のLAI撹拌と加温が生じ、軟組織溶解作用が向上した可能性が推察される。

    3-3. 新規超音波装置を用いた根管洗浄の清掃評価
    近年コードレスタイプの新規超音波装置EndoUltra(VISTA/モリムラ)が開発された。EndoUltraの清掃効果を従来の超音波洗浄、音波洗浄法等と比較した清掃効果を評価した。その結果、EndoUltraは、音波洗浄や従来のシリンジ洗浄よりも良好な清掃効果を示すとともに、超音波振動に伴う不要な歯質削除のリスクが少ないことが示唆された。

  • 直接覆髄材・根管充填用シーラーの新たな展開
    4-1. Mineral trioxide aggregate (MTA)による炎症制御の可能性
    直接覆髄において使用されるMTAは、ポルトランドセメント由来のケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウムを主成分とし、硬組織誘導能が高いことで広く臨床において使用されている。しかし、MTAの炎症に対する作用については十分に解析されてはいない。我々は、炎症歯髄のMTAに対する反応性について検討し、MTA抽出液で処理することで、LPS刺激された歯髄細胞あるいはマクロファージからの炎症性メディエーター産生が抑制されることを明らかにした。この作用は、カルシウム感受性受容体を一部介することも明らかになった。

    4-2. S-PRGシーラーおよびMTAシーラーの細胞毒性および硬組織形成細胞への影響
    surface reaction type pre-reacted glassionomer (S-PRG) フィラーは、フッ素イオン(F#U-#UR)、ホウ酸イオン(BO#D3#DR#U3-#UR)、ストロンチウムイオン(Sr#U2+#UR)、ケイ酸イオン(SiO#D3#DR#U2-#UR)などのイオン放出能を示す。S-PRGフィラーが添加された試作根管充填用シーラーは、未硬化の状態では、株化骨芽細胞に軽度の細胞毒性を示した。また、株化骨芽細胞の分化および石灰化結節形成を促進および誘導した。一方、種々のMTAシーラーにおける細胞毒性を検討したところ、一部のMTAシーラーは軽度の細胞毒性を示した。

    4-3. 新規合成ケイ酸カルシウム製材の開発
    合成ケイ酸カルシウム製材が次世代MTAとして注目されているが、練和や移送等、臨床応用に難点がある。本研究では、その改善策として、減水剤等を応用し、それによるケイ酸カルシウム練和物及び硬化体への影響を調べている。

  • ニッケルチタン(NiTi)ロータリーファイルを用いた安全で効率的な根管形成とNiTiロータリーファイルの金属工学的解析
    5-1. 新機構エンジンによる形成能:グライドパス形成用エンジンの根管形成能と回転疲労抵抗性の評価
    切削回転と非切削回転の往復回転運動を繰り返すグライドパス形成(OGP)機構を備えた新型自動根管形成用エンジンが開発された。 その有用性を評価するため根管形成能および回転疲労試験にて連続回転と比較検討した結果、 OGPを用いてNiTiロータリーファイルでグライドパス形成を行った場合、連続回転と比較して、根尖部における外湾側への変位量は同等で作業時間は延長するが、 回転疲労による破断時間は延長した。
    トルク依存型往復回転 (OTR機構: 設定トルク値に達すると90度非切削回転、 180度切削回転; 300 rpm、 0.4 Ncm) 、 時間依存型往復回転 (180度切削回転、 90度非切削回転; 300 rpm) 、 および連続回転 (300 rpm) で根管形成を行った。 垂直方向応力 (apical force) と回転方向応力 (トルク) をエンジンが臨床的上下動させるように作成した自作根管形成時応力解析装置で計測した。 トルク依存型往復回転運動では切削回転方向のトルクが大きかった。 また”Screw-in-effect”が生じた。 時間依存型往復回転運動では、 “Screw-in-effect”が小さい反面、 非切削回転方向のトルクが大きかった。 連続回転運動では“Screw-in-effect”が生じた。

    5-2. 臨床使用後のNiTiロータリーファイルの機械的特性
    臨床においてNiTiロータリーファイルの破折を防ぐ対策の1つとして使用回数の制限が設ける手法があるが、なおファイルの予期せぬ破折が起きる場合がある。そこで臨床使用後の NiTiロータリーファイルに回転疲労試験および片持ち梁式抗曲試験を行い、応力の蓄積を把握することが可能か検討した。 その結果、 回転疲労試験において使用後のNiTiロータリーファイルは未使用のものと比較して有意に破折までの時間が短かったが、 片持ち梁式抗曲試験では使用後と未使用の両群について有意な差は認めなかった。

    5-3. テーパーの異なるNiTiロータリーファイルにおける機械的特性
    各種のNiTiロータリーファイルの機械的特性を比較検討した報告は多いが、 同じ号数でテーパーの異なるファイルを比較検討した報告は少ない。 そこで0.04テーパーと0.06テーパーのEndoWaveの先端径0.3 mmを使用し、 両者の機械的特性を比較した。機械的特性の評価項目として回転疲労試験と曲げ疲労試験をおこなった。回転疲労試験では0.04テーパーのほうが破折までの回転数が多かった。また曲げ疲労試験では0.04テーパーのほうが弾性領域、 超弾性領域とも曲げ負荷の値が低かった。本実験条件下では0.06テーパーに比べ0.04テーパーのファイルのほうが回転疲労抵抗性、 曲げ疲労抵抗性とも高くなり、 ファイル破折の危険性が少ないことが示唆された.

    5-4.異種ファイルシステムを用いた根管形成時に生じる応力の特徴
    TF Adaptive systemおよびEndoWaveを用いた根管形成時に生じる応力の特徴を、自作根管形成時応力解析装置を用いて評価した。TF Adaptive systemはEndoWaveと比較してScrew-in-effectを生じるが、 低トルク値で根管形成が可能である。

    5-5. 新型NiTiロータリーファイルの金属学的特性の評価
    ProTaper Gold (PTG) をProTaper Universal (PTU) およびProTaper NEXT (PTN) とともに評価した。回転疲労試験および曲げ試験、また自作した自動根管形成装置を用いた根管形成実験を行なった。PTGおよびPTNは、 PTUと比較して回転疲労抵抗性および曲げ特性が優れており、 安全な根管形成が可能であることが示唆された。

  • 歯科用コーンビームCT(CBCT)・OCTによる精度の高い診査・診断
    6-1. CBCTを用いた根尖部骨欠損の評価と歯根破折診断に関する研究
    歯内治療における患歯の状態評価には、口内法X線撮影を用いた画像評価が不可欠である。しかし、病変の大きさや周囲の解剖学的形態により、口内法X線撮影では根尖部病変の検出精度に限界があり、実際には存在する病変を見落としてしまう可能性がある。近年、CBCT撮影により、三次元画像を用いることでより正確な根尖部病変の検出が可能になりつつあるが、放射線被曝量の高さからスクリーニングを目的とした使用には制限があるのが現状である。CBCT撮影で得られた画像データを口内法X線撮影画像と比較し解析を行うことで、口内法X線撮影では検出できない根尖病変の存在頻度の検討を行っている。
    垂直性歯根破折は歯の喪失の主な原因の一つであるが、その診断は困難である。我々の最近の研究では、垂直性歯根破折の症例および垂直性歯根破折でなかった症例(根尖周囲外科手術時に確認)において、術前のCBCT画像の近遠心・頬舌・水平断面画像の3方向で病変を描出し、そこから三次元解析ソフトにて病変の三次元構築モデルを作成して、その体積を比較・検討することで、垂直性歯根破折が高率に診断可能となることを報告している(三次元的骨欠損形態評価システム)。現在、報告した方法を用いた前向き研究を行い、改善点について検討するとともに、新規形態評価指標を用いた新しい評価システムの構築も模索しており、今後、CBCTによる垂直性歯根破折の診断精度の更なる向上をはかる予定である。

    6-2. CBCTを用いた根管形態の評価
    日本人の根管形態についてのCBCTを用いた大規模調査の報告はほとんどない。東京医科歯科大学歯学部附属病院でCBCT(Fine Cube®, ヨシダ)にて撮影された画像を用いて、上顎第一大臼歯1068歯、上顎第二大臼歯1036歯、下顎第一大臼歯858歯、下顎第二大臼歯820歯、計3794歯を対象に、歯根および根管の数をそれぞれ観察、記録した。今後、年齢による石灰化傾向、根管充填材の有無や撮影条件による検知能力の差異、MB2の3次元的位置評価、病変の有無などについて検討する。

    6-3. 光干渉断層画像診断法(OCT)の歯内治療領域への応用に関する研究
    OCTは、近赤外光と光学干渉計を用いた非侵襲的に組織の精密断層像を得ることが可能な医療撮像用の新技術である。OCTの特徴は、非侵襲的に空間分解能約10μm という極めて高い解像度を具備しているため、解像度が高い鮮明な画像が得られることにある。現在までに抜去歯を用いた歯根破折線の検出や象牙質内部の歯髄腔や根管の探索に有用である可能性が示されている。また、歯根端切除を想定した根尖切除面断端内部の破折線やイスムス、側枝の観察にも有用である可能性が示唆されている。今後、より臨床的に歯根破折線の検出能力や根管探索の精度などを肉眼・歯科用実体顕微鏡・CBCTと比較検討を行っていく予定である。
  • 教育活動

    当分野では、歯内療法領域をリードする研究者、臨床医の育成を教育目標としている。近年における歯髄生物学や歯内療法学の進展は目覚ましいことから、その最先端の内容を教授するのみならず、神経生理学、分子生物学、免疫学、生体材料学、画像診断学などの関連領域の知識、さらには最新の治療技法の修得に関する教育も行っている。独自の研究に基づき歯内療法領域における新知見を得ることが大学院の修了要件となる。

    臨床活動及び学外活動

    歯髄生物学分野は、本学歯学部附属病院においてう蝕制御学分野と共にむし歯外来を担当しており、グローバルスタンダードな歯内療法を提供することを目的として診療にあたっている。以下にその代表的な処置内容を挙げる。
    ・生活歯髄の処置(覆髄法、象牙質知覚過敏症処置)
    ・非外科的歯内療法
    ・再根管治療
    ・マイクロサージェリー
    ・無髄歯の漂白
    ・歯内療法後の歯の修復

    臨床上の特色

    歯内療法は近年大きく変化しており、Ni-Tiロータリーファイルによる根管形成、歯科用コーンビームCTによる診断、手術用実体顕微鏡下の非外科的・外科的歯内療法(microendodontics)などの導入が図られている。特にmicroendodonticsは、明るい拡大視野下で確実な診断や精密な施術を行うことを可能とするため、今までの「手探りで行ってきた」歯内療法をより確実な歯内療法へと劇的に変化させている。また、本分野における基礎的実験や臨床的研究に基づき、科学的根拠に立脚した歯内療法の提供に努めている。