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全分野紹介

顎顔面外科学分野

教授
依田 哲也
准教授
森田 圭一
講師
儀武 啓幸, 高原 楠旻
助教
友松 伸允, 原園 陽介, 倉沢 泰浩, 金 裕純
依田 哲也

分野概要

歯、顎、口腔、顔面領域に発生する疾患の原因と本態を追求するとともに、その予防と治療(主には観血的手術)及び教育を行う臨床歯科医学の一分野です。

研究活動

当分野では多岐にわたる顎顔面口腔領域の疾患に対し、以下のテーマを中心に研究を行っている。

  • 顎変形症:術後の安定性と手術術式の改良を目的とした研究を行っている。特に、口内法における術式の改良、術後の下顎頭の安定性、後戻り、下顎運動、皮膚感覚、安全な上顎骨後方挙上等について検討している。三次元超音波振動切削機(ピエゾサージェリーⓇ、ソノペットⓇ)を導入し、神経血管・骨膜損傷を抑える骨切り等を行っている。また骨接合の際に用いる吸収性プレートの力学的強度の研究を企業との産学連携研究として行っている。口唇口蓋裂患者の重度の上顎発育不全に対して創内延長装置であるZurich maxillary distractorやRED systemを用いた上顎全体の骨延長の適応や術後の安定性に関して検討している。自己血貯血の実態調査、外科手術前後の栄養調査、意識調査・口腔衛生に対する評価を行い、実際の臨床に反映させている。下顎枝矢状分割術における下顎頭位置決め方法についても改良を進めている。 また、クリニカルパスを導入して安全、確実な入院加療、術後入院期間の短縮を実現して患者に優しい医療を目指している。
  • 口腔悪性腫瘍:超音波、CT、MRI、PET等の画像を用いた診断や腫瘍進展範囲の検索の精度を向上させるための研究を引き続き行っている。超音波診断においては、カラードプラ超音波診断器を導入し、病変の血流の有無、方向、流速、性状など、腫瘍の質的診断の研究を行っている。口腔癌の組織型、発生部位別の治療成績の検討から、予後不良因子を抽出し、常に治癒率の向上を目指している。また、重複癌に関する臨床的研究、若年者・高齢者における口腔癌患者の動向に関する臨床的研究、遠隔転移様相に関する臨床的研究、口腔癌切除後の創被覆法、切除法の工夫に関する研究を行っている。さらに、術後治療の標準化、新規抗がん剤治療による治療成績についての研究を行い、治療成績の向上に寄与する研究を行っている。口腔再建手術後の咀嚼、嚥下、構音などの口腔機能の評価法に関する研究も進めており、術後QOLを向上させる再建法について検討を行っている。術後の摂食・嚥下障害が予想される患者に対しては、摂食リハビリ外来や病棟スタッフとの連携のもとで、術前より摂食・嚥下機能評価を行っている。特に腫瘍切除後に組織移植により再建術を行う患者に対しては、クリニカルパスを作成し、早期のリハビリ開始や、術後入院期間の縮小がはかられている。また、言語機能評価は言語治療外来にて行っているが、切除範囲や術式ごとの検討を行うことにより、機能温存を重視した術式の開発に取り組んでいる。
  • 口唇口蓋裂:口唇口蓋裂患者の初回手術前より口蓋床を用い、術前顎発育誘導による歯列弓形態の経時的な変化について解析を行っている。口唇形成や口唇修正においては、積極的に人中形成を含めた自然な三次元的形態回復を行っている。顔面の形態評価については2次元解析を行っている。口蓋形成では、言語機能や顎発育の両面を考慮したよりよい術式を選択し、成長期における咬合状態と言語機能について評価を行い,咬合や言語に与える因子の解析を行っている。顎裂部への二次的骨移植については、単純X 線写真やCT を用い骨形態や歯列弓形態についての評価を行っている。また、鼻咽腔閉鎖機能不全に対してまずは発音補助装置を用い改善を図り、必要に応じて咽頭弁移植術を行い、鼻咽腔閉鎖機能の獲得を行っている。重度の上顎劣成長に対しては、骨延長を適応し咬合改善を行い、術後の後もどりや長期術後安定性について検討を行っている。治療終了期の患者の総合評価を行い、治療プロトコールの問題点や改善点について検討している。研究面では、研究書承諾書を頂いた患者さんから手術中に生じた患者さんの血液、組織を用いて口唇· 口蓋裂の発生に関わる遺伝子解析を本学分子発生・口腔組織学分野と共同研究を行っている。
  • 顎関節疾患:口腔疾患と心因的な関連について、顎関節症患者を含む当科外来患者を対象として必要に応じて心理要因の調査を実施し、疼痛と不安・抑うつとの関連性を解析し、治療法を検討している。また顎関節に発生する腫瘍性病変についての外科治療を行うとともに発症原因や病態解明についての検索を行っている。従来からある開口訓練器の改良を行うと共に新しい型式の開口訓練器と開口度測定器の新規開発、それらの実用化と臨床応用に向けての研究開発を進めている。
  • 口腔再建:舌、口底、頬粘膜などの軟組織再建は、主に、前腕皮弁や腹直筋皮弁などの遊離皮弁移植を用いて行っている。顎骨などの硬組織再建は、遊離肩甲骨複合皮弁などの血管柄付き骨移植、骨髄海綿骨細片(PCBM)などによる再建を行っている。顎義歯、インプラント義歯など用いた咬合再建を最終目標とする取り組みと、咀嚼機能、QOL評価を通じて、より安全で機能的な口腔再建法の確立と機能評価・術式の標準化へ向けた研究を行っている。
  • 口腔粘膜疾患:白板症、扁平苔癬などの口腔粘膜疾患に対する治療のために専門外来を設置している。また粘膜疾患の病態に対する原因の調査を、全身疾患、局所、心因性のものにわたって行い、治療には一部東洋医学も導入している。
  • 歯および骨の再生に関する研究:歯髄細胞を細胞供給元とした再生医療の研究を進めている。これまでにヒト歯髄細胞は無血清培地にて培養した場合には象牙質を形成することが見いだされた。歯の再生には上皮系細胞と間葉系細胞が必要と思われる。上皮系細胞としてヒト口腔粘膜上皮細胞、間葉系細胞としてヒト歯髄細胞に着目し歯の再生研究を行っている。最近になり手術時に生じる余剰骨組織よりヒト骨髄間葉系幹細胞の培養にも成功しており、再生医療への応用研究を展開していきたいと考えている。
  • 口腔癌に対する基礎的研究:口腔癌検体より、レーザーマイクロダイセクションを用いて、それぞれの検体から正常部、上皮性異形成部、癌部を採取し、マイクロアレイ解析を行うことにより口腔癌の発癌過程におけるmRNAレベルの発現の変化をデータベース化した。そのデータベースより、正常から上皮性異形成、上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する遺伝子を同定した。

教育活動

口腔外科学においては口腔、顎、顔面領域に現れる先天性および後天性疾患について、その病因、病理、症状、診断、処置ならびに予後を理解させ、かつ、各種疾患の予防および治療に応用させるように教育する。口腔外科学で取り扱う範囲は非常に広く歯科と医科との重なり合った領域を扱うため、内科学、外科学ならびに隣接臨床医学とは密接な関係を有している。口腔外科学は一般に、歯およびその周囲組織を中心とした疾患を対象とする歯科口腔外科学と、顎口腔顔面領域にわたる疾患を対象とする顎口腔外科学に区分することができ、顎顔面外科学分野は顎口腔腫瘍外科学分野と分担して教育する。

1-1 第5学年前期において,次の内容について講義を行う。
顎口腔医療(内容については顎口腔腫瘍外科学分野と分担して行う)
(1) 顎口腔顔面領域の奇形,特に唇顎口蓋裂
(2) 顎口腔顔面領域の変形症
(3) 顎口腔顔面領域の損傷
(4) 顎口腔顔面領域の炎症· 感染症
(5) 顎口腔顔面領域の嚢胞
(6) 口腔粘膜疾患
(7) 顎口腔顔面領域の良性,悪性腫瘍
(8) 顎関節疾患
(9) 唾液腺疾患
(10) 系統的骨疾患
(11) その他
以上の疾患の成因、症状、診断、処置および予後について講義を行う。

1-2  第5 学年前期に次の内容について実習を行う。
(1) 臨床検査とその評価
1.一般簡易検査(血液型、赤血球数、白血球数、血色素量、血球容積、血球沈降速度、血液像、尿検査)
2. 血液検査手技(静脈採血、動脈採血)
3. 血清生化学検査、尿生化学検査(付、薬剤アレルギー検査、皮内反応)
4. 頸部の診察
(2) 滅菌および消毒法
手指の消毒,手術野の消毒,器械· 器具の消毒など
(3) 抜歯の基本手技
抜歯鉗子· 挺子の使い方
(4) 顎間固定法
連続歯牙結紮など

1-3 第6 学年臨床実習
外来実習では抜歯およびその他外来小手術の基本手技、投薬など、病棟実習では入院患者に対する手術を理解し、術前· 術後管理の基本などを修得する。

1-4 歯学部第6学年の特別講義を行っている。

1-5 医学部医学科第3学年および歯学部歯学科第3学年の頭頸部臨床ブロックの講義を担当している。

1-6 医学部医学科第4学年、口腔外科の講義、医学部医学科第5学年、口腔外科実習を担当している。

1-7 医学部保健衛生看護学科の講義を担当している。

1-8 医歯学総合研究科医歯科学専攻修士課程の講義を担当している。

臨床上の特色

臨床上の特色:近年の口腔外科疾患に対する治療法の進歩により最新かつ専門化した集学的治療体系が必要とされてきている。これに対応して当科では顎変形症、口腔悪性腫瘍、唇顎口蓋裂、顎関節、口腔粘膜疾患に対して専門外来を設け個々の患者へのきめ細かい対応ができる態勢を整えている。同時に集学的治療の実践のため、顎変形症や唇顎口蓋裂では症例検討会を矯正歯科外来と合同で行っており、口腔外科医と矯正歯科医が十分な検討を行った上で治療計画を立てている。また、悪性腫瘍に限らず病態が複雑な疾患や稀少な疾患を対象に口腔病理科、歯科放射線科と合同で臨床病理カンファレンス(CPC)を行い、症例について総合的に検討することにより、診断、治療に関わる知識を深め臨床に役立てている。