代表メッセージ

健康長寿を育む歯学教育コンソーシアム 代表
 東京医科歯科大学歯学部 学部長 森山 啓司

 我が国においては、平均寿命の延伸に伴い健康寿命との差が拡大し、日常生活に制限のある「不健康な期間」が長期化する傾向が指摘されています。これは個人の生活の質の低下を引き起こすとともに、医療費や介護給付費等の社会保障負担の増大を生じ、ひいては国力の低下を及ぼすことが懸念されています。超高齢社会への対応は喫緊の課題であり、健康長寿社会の実現には高齢者・要介護者への対応が肝要であると考えられがちですが、口腔領域の健康は高齢期を迎えてから対応するだけではなく、成長期から継続的に対応していく必要があります、すなわち、若年期を含めたあらゆるライフステージにおける口腔の健康増進、口腔領域の疾患制御と機能回復を図ることが、健康長寿社会の実現、国民のQOL向上には必要不可欠です。しかしながら、その実現のために,現行歯学教育には多くの課題が残されています。

 本プログラムでは、歯学教育分野で先導的な役割を果たしてきた5大学(東北大学・新潟大学・東京歯科大学・日本歯科大学・東京医科歯科大学)が国立私立の枠を超えてコンソーシアムを形成し、各大学の強みである教育資源を共有・補完することで、健康長寿を育む為のあらゆるライフステージに対応した全人的歯科医療を担う人材養成の実現を目指しています。

健康長寿を育む歯学教育コンソーシアム 代表
東京医科歯科大学歯学部 学部長
興地 隆史

現行歯学教育の課題

1超高齢社会における新たな歯科ニーズ、社会課題への対応
旧来型の技術教育の偏重、国家試験至上主義の暗記主義教育により、問題解決能力開発が不足している。また新たな歯科ニーズ,社会課題に対応できる教育システムへの移行が遅れている。
2歯科と全身疾患との関連
歯科が医療の一分野であることを意識させ、全身疾患との関連を体系的に習得させるシステムが十分に整備されていない。
3他分野,他職種との連携ができる歯科医療人の養成
新規医療技術開発に向けて革新的進歩を続ける他分野との連携、コメディカルスタッフ等の他職種とスムーズな連携が図ることができる歯科医療人の養成が十分になされていない。
4全人的医療を担うチームの一員としての歯科医療人の養成
超高齢社会の更なる進展に伴い、大きく変化する医療現場において、全人的医療を担うチームの一員として適切かつ効果的に行動できる歯科医療人を養成するための教育がなされていない。
5教育プログラムの全国的な共有化
歯学教育モデルコアカリキュラムが策定されているものの、現代社会ニーズに対応した教育プログラムの共有化が進んでおらず、優れた取組の全国波及・展開が遅れている。

健康長寿を育む歯学教育コンソーシアム