本事業の特色

e-learningコンテンツについて

 本事業は、将来的には蓄積した教育資源を全国共有して、歯学教育の高度化、標準化に貢献することを目標としています。そのため、汎用性が高く、誰にでも活用しやすいものとして、e-learningコンテンツの作成、蓄積を進めています。全国共有するためのe-learningコンテンツは内容が充実していることはもちろん、高品質で利便性の高いものであることが求められます。本事業で収録したコア科目動画は地域性や背景の異なる関連5大学の対象学年全学生が聴講してフィードバックをもらうことで、毎年のブラッシュアップを継続しています。
 ここでは、事業を通じたe-learningコンテンツの改善の流れについて、ご紹介します。

一年目

 H26年度9月より開始した本事業、初年度はカリキュラム、授業スケジュールの作成や収録環境、e-learningコンテンツの共有環境の整備に終われ、なんとかe-learningコンテンツを作成しました。ただ、整備した収録環境に不慣れだったということもあり、音声が聞き取りづらい部分がある、スライドの文字が読にくいなどの問題点が指摘されました。

二年目

 H27年度、関連全大学でコースが本格的に開始しました。音質、画質の改善のために、e-learningコンテンツの収録、作成において具体的に行った工夫として、以下のようなものが挙げられます。

  • 1)講義担当者に必ずマイクを使用してもらう
  • 2)学生に発言させる場合、学生にもマイクを使用させる。
  • 3)カメラ収録の画質が悪い場合、PCから直接スライドを取り込むようにする
  • 4)PCから直接スライドを取りこむ場合、レーザーポインタは使わないようにする
  • 5)文字が小さい場合、講義担当者は映像に映さない、もしくは小さくワイプ画面で入れるなどして、スライドが大きく表示されるように編集する

 以上の工夫を行い、画質、音質については受講学生から一定の評価を得ることができました。
 その後、受講学生から新たに多く指摘された問題点として、動画が長くて集中力が持たない、一方向性でただ聞いているだけだと眠くなってしまう、などの意見がありました。また、授業推進委員から、ただ映像を見せるだけでは学生の理解が不十分である、という指摘があり、次年度からはe-learningコンテンツの時間を少し短縮することで講義前後に話をする時間を確保すること、また各大学が開始時の導入、終了時のフィードバックのポイントも含めてe-learningコンテンツを提供することとなりました。

三年目

 H28年度はさらなるe-learningコンテンツの改善を目標に、5大学合同FDに愛媛大学総合情報メディアセンター教育デザイン室長の仲道先生、またトラストレイン社代表取締役の篠原先生をお招きし、e-learningコンテンツ作成の理論的背景及び具体的なノウハウまでご講演頂きました。その後の討論において事業推進委員よりいくつかの提案がされました。まず、双方向性の要素を取り入れるために、e-leaningコンテンツに設問を追加すること。これは動画提供大学が設問も含め、提供することとなりました。また、座学だけでなく演習もe-learningコンテンツとして作成することを目標としました。
 さらに、現在は5大学の授業のために活用されているe-learningコンテンツですが、将来的には全国の歯科教育期間において、活用されることが期待されます。その際には利便性、活用しやすさが今以上に求められます。そのために、動画は可能な限り内容に応じて15-20分程度で分割して細かな時間でも学習できるようにすること、また動画を再生せずとも、聴講することで何が学べるのか、何を学びたい時に見るべきものなのかが分かるように、e-learningコンテンツに解説を追加することとなりました。

四年目

H29年度は従来1時間程度の長さであったe-learingコンテンツを10-15分程度を目標に分割し、概容も共に表示することを進めました。

例)長寿を支える硬組織バイオロジー

<従来のe-learningコンテンツ>

  • 第1節 骨構成細胞の役割とロコモティブ症候群 前半 
  • 第2節 骨構成細胞の役割とロコモティブ症候群 後半
  • 第3節 硬組織の発生と骨の遺伝子疾患 

<H29年度のe-learningコンテンツ>

  • 第1節 講義の導入。硬組織、骨を構成する細胞の基礎知識
  • 第2節 破骨細胞とその関連疾患(大理石骨病、骨粗鬆症、関節リウマチ、歯周病など)。RANKLに関する知識及び癌骨転移との関連。
  • 第3節 破骨細胞に関連し、治療薬(ヒト抗ランクル抗体、Bisphosiphonte製剤など)や研究の紹介。
  • 第4節 骨芽細胞とその関連疾患。歯の組成。コラーゲンとその関連疾患。骨吸収マーカー、骨形成マーカー。骨細胞の力学的負荷応答。
  • 第5節 骨代謝に関するカルシウムの役割、調整機序。
  • 第6節 講義フィードバックテスト(解説)
  • 第7節 骨格を形成する細胞の発生の基礎的知識
  • 第8節 頭蓋縫合早期癒合症、Apert症候群(症候群性頭蓋縫合早期癒合症)
  • 第9節 広義のhemifaicial microsomia(第一第二鰓弓症候群、トリーチャーコリンズ症候群)

その結果、学習者は自身に必要な内容を限定して視聴することや、短い空き時間などを利用して視聴することが可能となりました。

また、演習形式の講義の収録も進んでおり、より多様性、汎用性に富むe-leraningコンテンツを蓄積することができています。

健康長寿を育む歯学教育コンソーシアム